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男系継承でも王朝交替になりうる―王朝とは理念の継承 [皇室典範改正]

DSC_171020210619blog.JPG男系派は、女系天皇、女性宮家になると王朝交替になると、喧伝しています。しかし、果たしてそうでしょうか、そうはなりません、ということを、前回まで書いて参りました。

男系、女系と王朝交替はどのような関係にあるのでしょう。王朝が続くとは、何を意味するのでしょう。

世界を見れば、男系継承でも王朝交替はあり、女系継承でも王朝存続の事実があります。

そのことについて、高森明勅氏が「男系継承でも王朝交替、女系継承でも王朝存続という事実」という記事を書いておられます。


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“皇位継承資格の男系限定を、無理な条件下でも維持しようとする人々は、「女系継承は王朝の交替を意味するから駄目!」と主張されている(王朝とは同じ君主の家筋に属する君主の系列)

しかし、そんな単純な話ではない。”

(「男系継承でも王朝交替、女系継承でも王朝存続という事実」2021.6.16高森明勅公式ブログ)https://www.a-takamori.com/post/210616

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高森氏は、男子の血筋を継いでいながら、王朝が交替したとされる、フランスの歴史上の実例を述べています。文字だけで少しわかりにくいので、どのようになっているのか、Wikipedia で見てみました。

フランス君主一覧表を見ると、たいへん複雑ですが、男系の血筋がつながっているからといって、同じ王朝名を名乗っていないことは、分かります。(Wikipedia)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E5%90%9B%E4%B8%BB%E4%B8%80%E8%A6%A7

高森氏は、オランダ王家の場合、3代、女系継承が続いていますが、「オランニェ=ナッサウ家」が続いており、断絶していないことを述べています。

「男系継承が王朝の存続、女系継承が王朝の交替を意味するーという“単純図式”では、歴史を正しく見ることが出来ない」ことが、このように、実例とともに分かりやすく書かれています。


高森氏の文章から話題が外れますが、日本の南北朝時代は、両統迭立という、日本で一度しかなかった、王朝(皇統)が2分した時代でした。

ところが、南朝(持明院統)、北朝(大覚寺統)、それぞれの初代の天皇は、同じ父母のお子様、実の御兄弟でした。男系の血筋という見方で見れば、同じ天皇、同じお后のお子様ですから、同じ男系の血筋です。いわば今上陛下と秋篠宮殿下と同じです。

持明院統・初代=第89代・後深草天皇
第89代・御嵯峨天皇の第三皇子

大覚寺統・初代=第90代・亀山天皇
第89代・御嵯峨天皇の第七皇子

この間の事情は、概略、次のような事情とのことです。(参考資料:『歴代天皇の御歌―初代から今上陛下まで二千首-』)

後深草天皇は、弟君の亀山天皇に譲位されて、以後亀山天皇の系統を皇位継承者としようとせられたのですが、時の鎌倉幕府の執権・北条時宗が、後深草上皇に御同情申し上げ、亀山天皇の皇子・後宇多天皇のあとは、後深草天皇の皇子が伏見天皇として皇位をおつぎになるよう斡旋したことから、いつの間にか皇位継承者が亀山天皇の御系統(大覚寺統)と後深草天皇の御系統(持明院統)の両統迭立(交互に皇位につく)ということになり、不幸にも歴代天皇と歴代外天皇という2つの皇位を生む悲劇につながりました。


弟君の大覚寺統が後の南朝、兄君の持明院統が、後の北朝です。

現代では、結局、兄君の後深草天皇がご希望された通り、弟君の亀山天皇の系統が、正統とされています。

いずれにしましても、初代は同じ父君母君の御子様ですから、男系の血筋と見れば全く同じです。それなのに、外見上、2つの王朝が同時に存在するような形をあらわしたことは、単なる男系の血筋の連続が王朝の連続を保証するのではない、男系の血筋が連続していても交替のような形を表わすことがあることの表れです。いまだにそれが尾を引いて「南朝が正統ではなく北朝が正統である」と主張する人もあります。

では、王朝の連続を保証するものは何なのか。それは「理念」の継承ではないでしょうか。王朝を継ぐ各継承者が掲げる理念、この家名を選び、この理想を実現するとの理念が、前の王朝と異なる時に、王朝の交替が現れるのだろうと思います。

理念:
1 ある物事についての、こうあるべきだという根本の考え。「憲法の理念を尊重する」2 哲学で、純粋に理性によって立てられる超経験的な最高の理想的概念。プラトンのイデアに由来。イデー。(goo辞書)

日本の皇室では、天照大神の御神勅の通り、「世々吾が子孫(うみのこ)の君たるべき国」の理念(理想)の継承が皇統継承(王朝の継承)とされています。

男系派の主張する旧宮家系男子が「男系の血筋」だからという理由のみで皇室入りしたとき、そこに継がれる「理念」(理想)に、「女性は男性より一段劣る」という「観念」が加わり、固定化されることになります。「男尊女卑」思想に基づき皇室入りした方々と言う観念が、国民の間に広まると思います。

前回まで述べて来た皇室に「名字が無い」ことが表わす「理念」、皇室が古代から引き継いできたすべての人々を男女ともに公平に見るという「理念」に、「男尊女卑」の観念という異物を加えて、固定化することになります。

そういう意味で、旧宮家系男子を、男系男子という条件だけで皇室入りさせるのは、皇室の「理念」(理想)を著しく損なうことになりはしないか、「王朝交替」に等しい悪影響をを与えることになるのではないかと懸念いたします。それを将来に引き継いでよいのかといえば、よくないと私は考えます。


今日も読んでいただき有難うございました。
皆様、どうぞ良い週末をお過ごしください。

タグ:女系天皇
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