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皇位継承を巡る有識者会議第2回ヒアリング―傾聴すべき女系容認の意見 [皇室典範改正]

DSC_133620210424blog.JPG去る4月21日、皇位継承を巡る有識者会議の第2回ヒアリングが実施されました。有識者としては、3回目です。(1回目は顔合わせでした)
ヒアリングの模様について、歴史の専門家ら4人の名前と意見の概要が東京新聞ウェブ版に報道されています。以下に引用します。


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『政府は21日、安定的な皇位継承策を議論する有識者会議(座長・清家篤前慶応義塾長)の第3回会合を開き、歴史の専門家ら4人からヒアリングを実施した。女性天皇を認めるべきだとの意見が多数出たほか、女性皇族が結婚後も皇室に残る「女性宮家」の創設を求める声も上がった。』

(「女性天皇認めるべき」の意見が多数 女性宮家創設の声も 皇位継承策の有識者会議)
2021年4月21日 20時04分 東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/amp/article/99593)

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東京新聞によれば、ヒアリングを行った4人と各意見の要点は以下の通りです。

○今谷明(いまたに あきら)・国際日本文化研究センター名誉教授(日本中世史)
意見:女性宮家は「早く創設」すべき、父方が天皇の血筋を引く男系の男子に限定する継承資格を、女系や男系女子に広げるかどうかの結論を出すのは時期尚早。

○所功(ところ いさお)・京都産業大名誉教授(日本法制文化史)
意見:男系男子を優先しつつ、一代限りで男系女子まで認めるのは「可能であり必要」。

○古川隆久(ふるかわ たかひさ)・日本大学文理学部教授(日本近現代史)
意見:母方に血筋がある女系天皇に賛成。女性天皇は安定的な継承策の「抜本的な解決策とならない」と指摘、女系容認とセットなら賛同。

○本郷恵子(ほんごう けいこ)・東大史料編纂所所長(日本中世史の専門家)
意見:女系、女性天皇いずれにも賛意を示す。

神道学者・高森明勅氏がブログで本郷恵子氏の説明資料から傾聴すべき点を引用しています。同ブログでは、古川隆久氏の説明資料についても簡単にコメントしています。


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『本郷氏の説明資料から。


「〔皇位継承資格を男系男子に限定する現在の制度について〕今日の家族観や性別についての考え方からすれば、男女の別のみにもとづいて、このような身の振り方を分けるやり方には疑問を感じざるをえない」


「〔内親王・女王に皇位継承資格を認めることについて〕少数であれ、天皇位に就いた女性がいたという事実は、たとえば他の大臣・大納言のような役職には決してみられないものである。天皇は…必ずしも女子を排除する存在ではないと考えられる。


また、中世には内親王が、皇室領の継承者・天皇家の構成員の庇護者としてあらわれるなど、確固たる役割を担った事例がみられる。このような歴史的事実を踏まえれば、内親王・女王への皇位継承資格の拡大という措置は、驚くべき展開ではなく、一定の根拠をもつものと理解することができる」


「〔皇位継承資格の女系への拡大について〕女性皇族に皇位継承資格を認めるのであれば、男性皇族と同じ条件で処遇するのが論理的な筋道にかなったやり方である。皇位継承資格の女系への拡大は当然であろう。…女系による皇位継承は先例のないことではあるが、長きにわたる天皇の歴史を十分に理解したうえで、新しい段階に歩を進める決断をすることは、伝統を更新し、その価値を再認識する意義を持つであろう」


「〔皇統に属する国民男性の皇籍取得について〕旧宮家が皇籍を離脱して以来、すでに70年以上が経過しており、国民にとっては全く遠い存在となっている。皇統に属する男子というだけでは、皇位継承資格者として現在の女性皇族を上回る説得力を持つとは考えられないのではないだろうか。


また…〔養子縁組や別に皇籍を取得する場合〕いずれにしても、皇統に属する男系の男子のなかから、なんらかの選択を行うことになるだろうし、当事者の側の希望や事情なども勘案する必要があるだろう。…厳密な血統継承には人智を超えた部分があり、(婚姻によって皇族となる場合を除き)選択や希望の結果として皇族になるというのは、そぐわないのではないだろうか」


「天皇制は、明確な検証を経ないまま続いてきた。この機会に女性・女系への継承資格の拡大が実現すれば、国民たる私たちは、天皇制の存続について非常に重要な決定を行ったという、大きな自信を持つことができるのではないだろうか」


傾聴すべき指摘が含まれている。


古川氏の説明資料も、もとよりそのまま支持し難い箇所も見掛けるが、興味深い。同資料の脚注に、平成17年6月8日の皇室典範有識者会議のヒアリングでの私の意見陳述を取り上げて戴いたのは光栄だ。』

「4月21日、皇位継承有識者会議ヒアリングでの女性・女系容認論」2021.4.24【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/post/210424

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中世史専門家の本郷氏の指摘はそれぞれ傾聴すべきことが述べられていると私も思います。要点を書き出してみます。

① 少数であれ、天皇位に就いた女性がいたという事実は…天皇は…必ずしも女性を排除する存在ではない。

② 中世には内親王が[天皇家において]確固たる役割を担った事例が見られ、この歴史的事実を踏まえれば内親王・女王への皇位継承資格の拡大は一定の根拠を持つと理解できる。

③ 女性皇族に皇位継承資格を認めるのであれば男性皇族と同じ条件で処遇するのが論理的筋道にかなったやり方であり、皇位継承資格の女系への拡大は当然である。

④ 女系による皇位継承は先例のないことであるが、天皇の歴史を十分に理解したうえで、新しい段階に歩を進める決断をすることは、伝統を更新し、伝統の価値を再認識する意義を持つ。

⑤ 旧宮家が皇籍を離脱してすでに70年以上が経過しており国民にとって遠い存在になっている。皇統に属する男子というだけでは、現在の女性皇族を上回る説得力を持つとは考えられないのではないか。

⑥ [養子縁組や皇籍を取得する場合]皇統に属する男系男子のなかからなんらかの選択を行うことになり、当事者の側の希望や事情を勘案する必要がある。

⑦ 厳密な血統継承には人智を超えた部分があり、(婚姻によって皇族となる場合を除き)選択や希望の結果として皇族になるというのは、そぐわないのではないか。

⑧ 天皇制は、明確な検証を経ないまま続いてきたが、この機会に女性・女系への継承資格の拡大が実現すれば、国民たる私たちは、天皇制の存続について非常に重要な決定を行ったという、大きな自信を持つことができるのではないか。

[感想]

特に⑧は重要な指摘だと思いました。天皇制とは何なのか、なぜ必要なのか、それとも不要なのか、なぜ2681年(皇紀)も続いて来たのか。天皇制はなんとなく必要だろうと思いながら、国民全体でその必要性を検証するということは、歴史始まって以来のことではないでしょうか。

このたび、国民が天皇制を今後も存続させるという意思を持ち、皇統継承について重要な決定に関与することによって自信を持つことができるのは、とても価値あることだと思います。

敗戦後、日本国に対して自信を喪失した日本人でしたが、今日ではようやく日本の歴史や伝統の価値が再認識されるようになってきました。世界の国々にも、アニメ文化など日本の良いものが発信されています。もちろん、改善すべき点も残されていますが。

天皇、皇室とは日本国民にとって何なのかを深く見直すために、今日の問題が起こってきたのかも知れない、ピンチはチャンスということを思わせられます。

なお、古川隆久氏の説明資料は、以下の通り、ネットに公開されています。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/taii_tokurei/dai3/siryou4.pdf

高森氏は古川氏の資料について「もとよりそのまま支持し難い箇所も見掛けるが、興味深い。」と指摘しています。私はまだ深く読み込んでいなくて「もとよりそのまま支持しがたい箇所」を理解していませんが、興味のある方はどうぞご覧ください。

今日も読んでいただき、有難うございました。
街はすっかり初夏の装いになりました。行く場所が限られるかもしれませんが、それぞれに良い週末を過ごされますよう、お祈り申し上げます。


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