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天皇の御歌(31)―第44代・元正天皇 [元正天皇]

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今日も元正天皇の御歌を
学びます。今日で3回目です。

元正天皇は
第43代・元明天皇の皇女、
第40代・天武天皇の御孫、
御在世:680~748(崩御69歳)、
御在位:715~724(36歳~45歳)

写真は御歌の「ホトトギス」に関連して卯の花を探したけれど、手元に無かったので、似た花を選びました。何の花でしょう。

☆☆☆

“先の太上天皇(おほきすめらみこと) (註・元正天皇)の御製の霍公鳥(ほととぎす)の歌一首

霍公鳥 なほも鳴かなむ もとつ人
 かけつつもとな 吾(あ)を哭(ね)し泣くも (萬葉集、巻第二十)

(*もとつ人=昔なじみの人、*かけつつ=心にかけて)

左大臣・長屋王(註・高市皇子の御子で、天武天皇の御孫。七二九年藤原氏の陰謀の犠牲となって薨去)の佐保の宅(いへ)に聖武天皇、御在(おほましま)して肆宴(とよのあかり)きこしめす。太上天皇(おほきすめらみこと) (註・元正天皇)の御製歌(おほみうた)一首

はだすすき 尾花逆葺(さかふ)き 黒木もち
 作れる 家(いへ)は萬代(よろづよ)までに (萬葉集、巻第八)“

(p53)

(小田村寅二郎 小柳陽太郎編著 『歴代天皇の御歌―初代から今上陛下まで二千首―』 日本教文社 昭和52年8月15日 第5版)

☆☆☆


1首目は、ほととぎすよ、もっと鳴いておくれ。去年も来て鳴いてくれた懐かしい鳥よ、おまえをこんなに心にかけているのに、一声ばかりで去ってしまって、私を泣かせるとは、酷いではないかというほどの意。

「もとつ人(懐かしい人)」は、元正天皇の御父君の草壁皇子か、弟君の文武天皇のことかも知れないと解釈する人もあります。夜中や、明け方にも鳴くので、近しい亡き人を思う心に結びついたのでしょう。夜、静まりかえった中で、キョッキョッキョと響き渡る鳴き声の余韻が、亡き人を思い出させます。

霍公鳥(ほととぎす)は、杜鵑、不如帰と色々な漢字があります。カッコウ目カッコウ科の夏鳥で、5月~9月に見られるとのこと。この辺で見た記憶はありません、鳴き声は「「キョッキョキョキョ」と鋭い声で鳴くので、「東京特許許可局」とか「テッペンカケタカ」と聞こえるそうです。古来から日本では愛され、萬葉集では額田王が「古(いにしへ)に恋ふらむ鳥」と詠み、清少納言は『枕草紙』第四十一段で、鳥の中で最も素晴らしいとしています。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の川柳も有名です。

(参考資料:とりのなんこ著『とりぱん大図鑑』講談社)

「夏は来ぬ」の歌では「卯(う)の花の、匂う垣根に 時鳥(ほととぎす)、早も来鳴きて 」と歌われていますね。卯の花は「ウツギ」というそうです。


ホトトギスの姿を見たことがありません。歌声は聞いているかも知れないけれどもよく分かりません。Youtubeで聞くと、ウグイスにやや似ているので、ウグイスだと思って聞き流していたかも、知れません。来年は意識して聞いてみようと思います。

余談ですが、わが家の近くの緑地では夏でもウグイスの声を聴くことができます。父が愛した散歩コースなので、ウグイスを聴くと亡き父のことを思い出し、励まされているような気がします。小さな鳥なのに、声が力強くて、勇気を与えられます。


2首目は、ススキを逆葺きして、皮のついた木材を使った新築の建物は、いつまでも長持ちしますようにとの御製。

左大臣の長屋王(ながやのおほきみ)が佐保に建てた作宝楼(さくほろう)という屋敷に太上天皇と聖武天皇が行幸されて、新築のお祝いの宴で詠われたものとのことです。

「はたすすき」は、穂の出る前の皮をかぶった状態の薄(ススキ)
「逆葺く」は、草を普通とは逆に使って屋根をふく、穂先を下に向けて葺くこと
「尾花」ススキの花穂。形状が獣の尾に似ていることによる名
「黒木」皮のついたままの木材
「室」四方を囲い閉じた部屋や建物

ススキは繁栄を願う意味があるとのこと。お月見の時も、ススキを飾るのはその意味なのでしょうか。長屋王の変で薨去されたことを思うと、長屋王の御霊を思って、萬葉集に収録されたのかもしれません。長屋王は反乱の疑いをかけられますが、無実だったようです。


建物の有様、ススキや黒木が、詳しく詠われているのが、面白いですね。NHKの「ふるカフェ系 ハルさんの休日」で、ハルさんが古民家の建築の細部を語りますが、昔の人の色々な知恵と工夫が凝らされていることを、聴くのが楽しいです。それと同じような興味を覚えます。

『とりぱん』は、東北地方に住む、野鳥をこよなく愛するのとりのなんこさんの漫画ですが、野鳥の生態がよく分かります。野鳥観察の手ほどきにもなりました。


今日も読んでいただき有難うございました。

台風が近づいているようです。どうぞお気をつけて、良い週末をお迎えください。


参考資料:

・とりのなんこ著 『とりぱん大図鑑』 講談社

・やまとうた和歌
 https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/gensyou2.html


タグ:野鳥
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