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天皇の御歌(25)―第35代皇極天皇・第37代斉明天皇 [皇極天皇・斉明天皇]

DSC_0497白小花0823blog.JPG今日は第35代・皇極天皇・重祚して
第37代・斉明天皇の御歌を学びます。

ご在世:594~661(崩御68歳)、
御在位642~645年(49歳~52歳)
重祚して
御在位655~661年(62歳~68歳)

皇極天皇は、第34代・舒明天皇の皇后で、第38代・天智天皇、第40代・天武天皇の御母君でした。皇極天皇の時代には、聖徳太子の御子山背大兄王御一家が蘇我入鹿により、御一族全員が御自害に追い込まれました。その2年後、中大兄皇子が、藤原鎌足と共に、入鹿を誅伐せられたのが大化の改新でした。
大化の改新を機に退位せられた皇極天皇は、十年後に重祚され斉明天皇となられました。御即位後658年孝徳天皇の皇子・有間皇子が誅せられるという悲劇が起こります。658年阿倍比羅夫を派遣して蝦夷を征討、さらに粛清(イシハセ、蝦夷以外の北方民族)を討って大和民族の勢威は北方におよびました。そのあと、朝鮮半島で百済が新羅に攻められ、救援を求めてきたのに対し、中大兄皇子をはじめ群臣を率いて新羅征討軍を起こして御親征になられたが、途中九州の朝倉宮(福岡県)に御駐留の折、御病気で崩御せられました。(御陵墓は、奈良県高市郡高取町にあります。)

68歳で、それも女性天皇が、征討軍の先頭に立たれたということが信じられません。今でしたら、九州旅行はなんでもないことですが、古代の交通の不便な時に、奈良から移動されるだけでも大変なことだったと思います。神功皇后もそうですが、固い御決意と御自覚のほどがうかがわれます。


☆☆☆

“斉明天皇4年(658)五月(さつき)に、皇孫健王(みまごたけるのみこ)歳八歳(みとしやつ)にて薨(う)せましぬ。今城谷(いまきたに)の上に、殯(もがり)を起てて収む。天皇(すめらみこと)、本より皇孫(みまご)の有順(みさをか)なるを以て、器重(ことにあが)めたまふ。故(かれ)、不忍哀(あからしび)たまひ、悼み慟(まど)ひたまふこと極めて甚(にへさ)なり。群臣(まへつぎみ)たちに詔(みことのり)して曰(のたま)はく、「萬歳千秋(よろづとせちあき)の後に、必ず我が陵(みささぎ)に合せ葬(はぶ)れ」とのたまふ。廼(すなは)ち作歌(うたよみ)して曰(のたま)はく、

今城なる 小丘(をむれ)が上に 雲だにも
 著(しる)くし立たば 何か歎(なげ)かむ 其一

射ゆ鹿猪(しし)を 認(つな)ぐ 川上(かはへ)の若草の
 若くありきと 吾(あ)が思(も)はなくに 其二

飛鳥川(あすかがは) 漲(みなぎ)らひつつ行く水の
 間(あひだ)もなくも 思ほゆるかも 其三“ (p41)

(小田村寅二郎 小柳陽太郎編著 『歴代天皇の御歌―初代から今上陛下まで二千首―』 日本教文社 昭和52年8月15日 第5版)

☆☆

(大意)

(1首目)
“いとしさひとしほのかわいい孫の健の王を葬り収めた今城の谷の丘の上に、せめて雲だけでもはっきりと立ち昇ってくれるならば、その雲をいとしい孫の形見と思って心を慰め、悲しみを忘れようものを。”

(3首目)
“飛鳥川をみなぎりつつ流れて行く水が、とぎれることなく流れ続けてゐるやうに、幼くして死んでいった可愛い孫のことが、たえ間もなく思ひ忍ばれて忘れることができない”

(pp171~172)


(山口悌治著『万葉の世界と精神 前篇』、日本教文社)

☆☆☆

2首目 弓を射られた鹿や猪の後をたどっていくと川のほとりに出る。そこに芽生えたばかりの若草のようにあの子が幼すぎたとは思わないが、それでも私は悔やまれる。

健王は8歳まで育ちました。 話すことが不自由だったとのこと、病弱だったのでしょうか。そうであればやっとここまで育ったという思いもあったのでしょう。

1首目 雲を亡き人に見立てるのは、持統天皇の「たなびく雲の青雲の」もそうでした。天武天皇が月や星を置いて離れて行く様子を詠っていました。万葉の人には、雲が亡き人の魂に見えたのかも知れません。

私は父のお墓参りに行くと、よく蝶に出会います。先日は、お墓参りに行った翌朝、ごみ捨てに外に出たとき、地面にひらひら舞う影が見えて、見上げると黒いアゲハ蝶が空のかなたに飛んでいきました。父が喜んでくれたのかと嬉しくなりました。

2首目は、8歳という年齢は若草よりも育っているということで、七歳にして男女同席せずという言葉もあるように、幼児から小児に成長したという古代人の感覚は、今でも七五三で七歳が一つの節目として同じ感覚が続いているのだと思います。

それでも愛しい孫のことが絶え間なく思い出されるのは身体が弱いだけにひとしお可愛かったのでしょう。何だか分かる気がいたします。人が人を愛するというのは体力とか知的能力とかいうことだけでなく、魂と魂の触れ合いという、言葉にならないものがあるのだと思います。

今日も読んでいただき、有難うございました。

今日も暑いですが、もう少しの辛抱ですね。皆様にとって良い一日でありますように。

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