天皇の御歌(8)-第117代 後桜町天皇 [後桜町天皇]
今日も、江戸時代の女性天皇、後桜町天皇の御歌(おうた)を詠ませていただきます。
御在位期間は、二十三歳~三十一歳の9年間でしたが、それ以後も、ずっと上皇として、天皇の皇位継承に貢献され、七十四歳で崩御されるまで、第百十八代 後桃園天皇、第百十九代 光格天皇を、支えて来られました。
万葉一統の皇統の一員として、御皇室を支え、國民(くにたみ)のために、祈り続けられた女帝の愛と知恵に満ちたお姿がしのばれます。
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“述懐(明和四年 ― 一七六七 ― 御年二十八歳)
まもれなほ 神のめぐみに つたへきて 明暮 あふぐ ことの葉の道
(住吉社御法楽)“
(p296)
“述懐(明和六年 ― 一七六九 ― 御年三十歳)
おろかなる 心ながらに 國民の なほやすかれと おもふあけくれ“
(p297)
“竹契遐年(文化九年 ― 一八一二 ― 御年七十三歳)
(註・この年閏十一月、崩御)(*遐年=長生き、長寿)
ならひつゝ 千代も契らむ 呉竹の なほきすがたを 人のこゝろに
(御会始)
(P300)
(小田村寅二郎 小柳陽太郎 編著 『歴代天皇の御歌 ― 初代から今上陛下まで二千首 - 』 日本教文社 昭和52年8月15日 第5版)
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第1首めは、神のめぐみに伝えられてきた言の葉の道。明暮(あけくれ)明けても暮れても、いつでも、その、ことの葉の道を、仰ぎ続けるとのご決意を述べておられます。
ことの葉の道は、和歌の道のことですが、よき言葉を使い続けることも、ことの葉の道につながるように思います。私も、日常生活の中でも、できるだけ、良いことば、美しい言葉を、心を込めて、味わい、使う努力をしてまいりたいと思います。
第2首めは、「おろかなる」は古語では「いい加減、ばかだ、拙い」という意味ですが、「もちろん」という意味もあるようです。
この場合は、謙虚に「拙い(つたない)」というお気持ちなのでしょうか。
拙い心ではあるけれども、国民が、さらにさらに、その生活、心が安らかであるように、と一日中祈っておられる。
いつも国民の安寧と幸福を祈られる、現代の上皇陛下、上皇后陛下、天皇陛下、皇后陛下の御心に相い通ずる尊さを感じます。ありがたいことです。
第3首めは、再び、「呉竹」を詠まれています。「契る」というのは、固く約束するという意味です。 呉竹のまっすぐなすがたを、人のこころに映そう、「千代も」、いつまでも末長く、というお心です。固いご決意の表れと思われます。人が素直である事、それは、固く約束する、後桜町上皇がご決意されるほど、価値のあることである、あらためてそう思いました。
素直さを貫くことは、時には勇気のいる事でもあります。智慧も必要です。頑固であるということでなく、熟慮して正しいと思ったことを貫く、肩ひじ張らずに、無理でなく。
そのようになりたいと思いました。
今日も読んでいただき、有難うございました。
皆様にとって、今日一日が、安らかで、良いことに出会える一日でありますように。
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