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天皇陛下のお言葉(令和元年8月15日「全国戦没者追悼式」)に思うこと― 目的が正しくても、手段の反省は必要 ― [今上陛下]

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令和元年8月15日(木)(「全国戦没者追悼式」における天皇陛下のお言葉について、いかに細部に至るまで、お気持ちの行き届いたものであるか、高森明勅氏の文章から学ばせていただいた。

https://www.gosen-dojo.com/blog/23309/「おことば」の誠実さ)
https://www.gosen-dojo.com/blog/23320/「終戦記念日の「おことば」の深さ」)

「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ,ここに過去を顧み,深い反省の上に立って,再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,全国民と共に,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。」(天皇陛下のお言葉(令和元年8月15日「全国戦没者追悼式」)宮内庁ホームページより)

それぞれ心に沁みる、高森氏の文章である。


ところが、ある掲示板で、天皇陛下が「深い反省」と述べられたことについて、「陛下の『深い反省』との言葉は、戦争の結果、アジア諸国の植民地が解放されたという成果を否定された言葉だ」と、とんでもない誤解をして、陛下を非難している意見を目にした。

ある事柄について、「反省」と述べたら、その事柄の成果まで否定したと決めつけるのは、「風が吹けば桶屋がもうかる」たぐいの論理の飛躍であり、きわめて軽率であると思う。


戦時中に青春期を過ごした母に「なぜ日本はあのような悲惨な戦争をしてしまったのか」と質問したとき、母は「多くの植民地化されたアジア諸国から日本に亡命して来た人々が、祖国の独立を助けて欲しいと訴えて来たから」と答えた。インドネシアの独立のため、戦後も残留して戦った元兵士の話は、思い起こすたびに目に涙が浮かぶ。母の話はその時代を生きた人の実感であると思う。

先の大戦において、白色人種から植民地化された有色人種を開放するという目的(理想)は正しかったし、紆余曲折があっても、結果的にそれが実現したことには、大きな意味があったと思う。理想の為に祖国に尊い一命を捧げられた戦没者の皆様には、深い感謝と尊敬の念を表したい。

しかし、目的が正しくても、その時の手段が最適だったかと、反省することは何事においても大切だと思う。先の大戦そのものが目的達成の手段として日本にとって必須であったのかと、あらゆる角度から問いかけることは、日本のより良い未来を考えるために必要なことだ。そこに「反省」の意味がある。

日本は望まなかったのに、米国の戦略で開戦せざるを得なかったとの見方もある。
昭和16年(1941年)の開戦直前の国際状況を見れば、日米開戦がどうしても避けられなかったということも納得できる。

しかし、戦争の原因となったそれぞれの事柄について、歴史を、明治の初めまでさかのぼったらどうだろう。本当に避けられなかったのだろうか。


ざっと考えただけでも以下の分岐点(ターニングポイント)が考えられる。

○明治6年(1873年)西郷隆盛が使節となって朝鮮に渡り、「東洋王道の精神」による対朝鮮外交が実行され、明治8年(1875年)の「江華島事件」における砲艦外交がなかったとしたら?

○明治28年(1895年)日清戦争の下関条約で清国から多額の賠償金を取らずに、その結果、日本と清との関係がより友好的なものになっていたとしたら?

○昭和13年(1938年) 近衛文麿が「国民党を相手にせず」などと言わずに、蒋介石と和平を結んでいたとしたら? 泥沼の支那事変に踏み込むことがなかったかも知れません。

他にも数え上げればいくつもの分岐点があげられる。

各分岐点において、日本が「東洋の王道精神」による道義に基づく行動を選んでいたとしたら、先の大戦のような凄惨な形ではなく、仮に戦争があったとしてもより損失の少ない形で、植民地解放の目的が実現していたかも知れない。

隣国であり長い交流の歴史があり、同じ東洋人の朝鮮、中国に対して、いち早く西洋文明に目覚めたとの奢りが、日本にあったのではないか。


2600年の歴史を背負っておられ、昭和天皇、上皇陛下の御心を継がれた今上陛下は、歴史の見方において、吾々一般国民には見えていない、深遠なる透徹した世界を見ておられる。まさに一視同仁である。

これは長年、陛下の御文章に親しみながら、私が到達した結論である。

一国民としては、そのような重厚な意味をたたえた天皇陛下のお言葉を、そのまま謹んで承りたいと願うのみである。

戦陣に散った戦没者の皆様に感謝と尊敬の念を捧げるのは子孫として当たり前のことだが、同時に、先の大戦について子孫が真剣に調べて学んで、反省すべき点は反省して、天皇陛下と心を一つにして「過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願」うことは、子孫の幸せを願い、誰よりも平和の尊さを知っている戦没者の方々の最大の望みではないかと拝察する。

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