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古事記の思い出―神話と歴史の区別 [歴史]

DSC_0466ヒマワリblog.JPG元明天皇が『古事記』を完成させたことに関連して、『古事記』について書いてみます。

私の『古事記』の思い出は幼時、たぶん4、5歳にさかのぼります。母は戦前生まれで戦後生まれの子供たちに古事記を伝えたかったらしく、寝る前に『古事記』を物語風にアレンジして、話してくれました。私は物語を聞きながらその光景がありありと目の前に浮かぶたちで、色々な光景を想像しながら聞いていました。

物語が進み、火の神を産んだときの火傷がもとで亡くなられた伊邪那美命(いざなみのみこと)を、黄泉の国に伊弉諾命(いざなぎのみこと)が追い求めて、対面する場面になりました。「見てはいけない」と言われていたのにもかかわらず、伊弉諾命は、待ち切れなくなって、手に持った櫛で火をともして、伊邪那美命が横たわっている有様を覗いてしまいます。

母の語りがあまりにも上手だったので、私の目の前には、横たわる伊邪那美命の頭、胸、腹、四肢にギョロリと眼を剥いた雷の神がゾロゾロ座っている光景がありありと浮かびました。恐くなって大声で泣きだした私に、母は慌てて話を中断し、なだめてくれました。その時は、ひたすら怖かったのですが、今は懐かしい思い出です。

それでも、『古事記』に悪い印象はありませんでした。原文を読み始めたのは大人になってからですが、お蔭様で断片的ではありますが、古事記の神話に親しんできたと思います。


現代において、『古事記』は神話であり、歴史ではありません。戦前では日本神話が全て正史であると教育されていて、弥生以前の研究をするのはタブーであるという風潮があったとのことです。

戦後はその反動もあり、考古学が盛んになったようです。「神話」は、時の権力者がでっちあげたものという見方もあり、神話が極端に軽視されていた時代もありました。

しかし、「神話」には、日本人の夢や理想が語られているので、心を豊かにする文学として、親しみ大切にして行きたいと私は思います。


一方、現在の歴史学の通説では、神武天皇は「フィクション」とされ、教科書でも神武天皇は歴史上の人物ではないとされています。神武天皇の後の8代までの天皇も実在が証明されていません。歴史学という学問において、そのような文書や記録に基づくことは必要であり、日本が国として教科書においてそのような方針を堅持していることは、学問的に必要なことなのだと思います。

それに対して、一国の総理大臣が学校教育と明らかに矛盾する説を公言するのは、好ましいこととは思えません。しかし、安倍総理は、神武天皇が歴史上の実在の人物であると信じているようです。

https://news.biglobe.ne.jp/domestic/1117/ltr_161117_3345449054.html


人それぞれの考え方があるので、安倍総理が個人としてどのような信念を持っていてもかまいませんが、一国の総理の発言においては、国の決めた歴史教科書の方針と明らかに齟齬をきたすような発言は差し控えるべきだと思います。

また、安倍総理のブレーンで大勢を占める「皇位は何が何でも男系男子継承」支持派は「神武天皇以来、天皇は一貫して男系で続いてきた」と強弁しています。しかし、実在が証明されていない「神武天皇」という起点が不確かなのに、それから125代の天皇が男系で続いて来たということを、どうやって証明するのでしょうか。

神話と伝承の世界に天皇のルーツを求めるなら皇統譜の上でも「天照大神」が皇祖神です。同じ神話上の人物である「神武天皇」を起点とするよりも、「天照大神」を皇祖の初まりとするのが素直な見方だと思います。

※皇統譜:天皇および皇族の身分に関する事項を記載する帳簿

また、歴史学的な見方に立てば、「神武天皇」の「天皇」の名称が法的に成立したのは、「持統天皇」の御代ですから、「天皇の始祖」は「持統天皇」という見方が成り立つという説もあります。それまでは、神武天皇では無く、和風諡号(しごう)は、神日本磐余彦尊(かむやまといわれひこのみこと)で、中国から見れば「大王」でした。後世の人が「天皇」と名付けたわけです。歴史的に実在が証明されない、名称も天皇ではなく大王だった神武天皇から、男系が続いているというのは、「フィクション」であることを、安倍総理とそのブレーンの皆様はよく考えてほしいと思います。

天皇陛下のことを染色体で説明する「男系男子」支持派の意見を取り上げるのは不快ですが、科学的と称しながら、歴史上実在しない神武天皇からy染色体が続いているという考えなど、きわめて非科学的な、完全な虚構の産物であると言わざるを得ません。


何事も観念論にとらわれて、現実を見ないでいると、取り返しのつかないことになりかねません。

安倍政権には、現実を真剣に見つめて、御皇室の事を本気で考えて、国民の声を聞きながら、皇位継承問題に取り組んでいただきたいと、切に願っています。

今日も読んでいただき、有難うございました。

なかなか涼しくなりませんが、美味しいものを食べて、夏を乗り切ってください。

皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

タグ:皇室 歴史
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