天皇の御歌(2)-大正天皇 まことの心 [大正天皇]
今日も、大正天皇の御歌を読みます。
いずれも、下記書籍から引用しています。引用末尾は、同書の掲載ページです。
(小田村寅二郎 小柳陽太郎 編著 『歴代天皇の御歌 ― 初代から今上陛下まで二千首 - 』 日本教文社 昭和52年8月15日 第5版)
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“(大正三年 ― 一九一四 ― 御年三十六歳)
*昭建皇太后崩御。第一次世界大戦おこる
をりにふれて
おしなべて 人の心の まことあらば 世渡る道は やすからましを“
(p385)
“大正七年 ― 一九一八 - 御年四十歳)
*シベリアに出兵。第一次世界大戦終る
月前陳思
さやかなる 月にむかへば なかなかに こころぞくもる 昔しのびて
天の下 くまなくてらす 秋の夜の 月を心の かゞみともがな
家
外國(とつくに)の さまをうつせる 家もあれど 白木づくりぞ ゆかしかりける”
(p390)
“(大正九年― 一九二〇 - 御年四十二歳)
猫
國のまもり ゆめおこたるな 子猫すら 爪とぐ業は 忘れざりけり“
(p392)
(小田村寅二郎 小柳陽太郎 編著 『歴代天皇の御歌 ― 初代から今上陛下まで二千首 - 』 日本教文社 昭和52年8月15日 第5版)
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〈感想〉
第一首めは、 概して 人の心の まことがあれば 世の中の生活も やすらかであるのに とのご嘆声でしょうか。
まことの心 とひと言で申しますが、「まこと」を尽くすのは、凡人には簡単ではない。それでも努力するところに意義ありと、精進したいものです。
まことは、「まる」、「こと」に通じて、八方円(はっぽう まるい)いことだと、読んだことがあります。
日本人は、「忠」、「孝」と分けないで、すべて「まこと」であると考えていたというのです。
主君にまことを尽くす、両親にまことを尽くす。
問題も、争い事も、すべてを円く収めるという、「まこと」は、奥が深いと思います。
第二首目の、“こころぞくもる”と詠まれた大正天皇は、どのようなことで、お心をくもらせていらしたのか、病弱でいらした大正天皇は、国の事でも、御身辺のことでも、お心を悩ませることも多かったのだろうと拝察いたします。
一方、第三首め“天の下 くまなくてらす 秋の夜の”の御歌は、さやかな月の光、澄みわたる秋の夜空が、目の前に広がります。
私自身の月の思い出は、月をあおぎながら、永遠に美しいものはどこにあるのかと天に向かってつぶやいていた、思春期の頃を思い出します。
あの頃は、天皇陛下のことを何も知らなかった。天皇陛下のことを教えていただいて、これほど美しい生き方をされている方々があったのかとの喜びに満たされました。 御皇室をいただく感謝を思います。
第四首め。大正天皇は、フランスなど西洋の文化がお好きだったそうですが、ここでは、“家屋”について、“白木づくり”のゆかしさ、心ひかれるなつかしさを 詠われています。
西洋の自由な空気へのあこがれもありつつ、日本の昔ながらの建築も、なつかしく思われたのでしょうか。
第五首目。大正天皇の身近に仔猫がいたのでしょうか。 「国防」を、爪を研ぐ仔猫から、お詠みになる、軽妙なユーモアが感じられます。 仔猫でも身を守る術は知っている。国防と云う真剣なテーマなのに、なんだか、ほっといたします。
現在の天皇陛下(今上陛下)、皇后陛下は、犬を飼っておられます。
高価な血統書付きの犬ではなく、保護犬とのことです。
そこに、日本の皇室の、思いやりあるお心がしのばれます。
愛子さまは蚕を飼っておられます。皇后陛下 雅子様も、小学生の頃、虫の飼育がお好きだったとのこと。小さな生き物に愛を感じられるお二方に、親しみを感じます。
私は専門家でも研究者でもないので、間違って解釈しているところがあるかも知れません。
ご意見、ご感想のコメントを歓迎いたします。
今日も読んでいただき、有難うございました。皆様の日々が幸せで満たされますように。
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