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天皇の御歌(52)―第15代・応神天皇 [応神天皇]

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今日は第15代・応神天皇の御歌を学びます。

御在世:200~310(110歳)
御在位:270~310(70歳~110歳)

応神天皇は誉田別尊(ほむたわけのみこと)と申し上げ、第14代・仲哀天皇の第四皇子で、母君は、仲哀天皇の后、神宮皇后です。

神功皇后は「皇后」で、天皇ではないのですが、日本書紀には「天皇」との記述があり、明治時代までは、一部史書で第15代天皇、初の女帝(女性天皇)とされていたとのことです。そこで、女性天皇に準じて学びたいと思いまして、神功皇后の時代背景を知るために、お子様の応神天皇を先に学ぶことにしました。

応神天皇の3代前、第12代・景行天皇の御代に、皇子・日本武尊(やまとたけるのみこと)の東征・征西があり、大和朝廷による国内の統一がほぼ達成せられました。

母君、神功皇后は朝鮮半島新羅に出征せられ、その間、応神天皇は神功皇后の胎中にあらせられたことから、「胎中天皇」とも言われました。



☆☆☆

“あるとき、天皇(すめらみこと)、近つ淡海(ちかつおうみ)の国に越え幸(い)でましし時、宇遅野(うぢの)の上(ほとり)に御立(みたち)したまいて、葛野(かづの)を望(みさ)けて歌曰(うた)ひたまひしく、

千葉(ちば)の 葛野(かづの)を見れば 百千(ももち)足(だ)る
家庭(やには)も見ゆ 國の秀(ほ)も見ゆ
(*百千たる=民家が満ち栄へてゐる)
とうたひたまひき。

(中略)(以上、古事記、中巻)”

(pp23~24)

(小田村寅二郎 小柳陽太郎編著『歴代天皇の御歌―初代から今上陛下まで二千首―』日本教文社 昭和52年8月15日 第5版)

☆☆☆

言葉の意味

近つ淡海:琵琶湖(びわこ)。 また、琵琶湖のある所の意で、近江(おうみ)の国(滋賀県)の古名。 近い淡海(=湖)の意。 「あふみ」は「あはうみ(淡海)」の変化した語。

宇遅野(うぢの):「宇遅」は今の京都府宇治市。

上(ほとり):付近

千葉:葛野の枕詞。「葉がたくさん繁る」という意を籠めた讃め詞

葛野(かづの):京都府宇治市の西

望(みさ)ける:遠く見やる。眺望する。

百千足る:十分に満ち足りている。

國の秀(くにのほ):国のすぐれた所。具体的には山に囲まれた平坦な広い土地を言う。

言葉の意味、解釈については、以下のネットを参考にさせていただきました。
(「千人万首」「応神天皇」
https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/oujin.html


詞書と御歌の解釈:

ある時、天皇が近江の国に行幸されたとき、宇治のあたりに御立ちになって、葛野を遠く見渡しながら、歌われました。

葉がたくさん繁る葛(かつら)のように緑豊かな葛野を見れば、十分に満ち栄えている家々が見えるし、山に囲まれた広々とした美しい平野も見えるよ


感想:

これは「国見」の御歌だと思いました。

国見:天皇や地方の長 (おさ) が高い所に登って、国の地勢、景色や人民の生活状態を望み見ること。もと春の農耕儀礼で、1年の農事を始めるにあたって農耕に適した地を探し、秋の豊穣を予祝したもの。

天皇が高いところに上って、葛野の原や、各家の情景を歌い、良い言葉でほめたたえて、秋の豊かな実りと土地、人々の繁栄を祈ることが、古代から行われてきました。

現代に置き換えれば、天皇が日本各地に行幸されて、行く先々の土地や産業を見て、人々を励まし、ほめたたえることに、その伝統はつながっています。


日本武尊の御歌

『倭(やまと)は 国のまほろば たたなづく青垣(あをかき) 山籠(やまごも)れる 倭し麗(うるは)し』
(大和は国の中でも最もよいところだ。重なり合った青い垣根の山、その中にこもっている大和は美しい)

も、望郷の歌ですが、国をほめたたえる「国見」に相通ずる御歌とも思えます。


第34代・舒明天皇の御製

“大和(やまと)には 郡山(むらやま)あれど とりよろふ
天(あま)の香具山(かぐやま) 登り立ち 国見(くにみ)をすれば
国原(くにはら)は 煙(けぶり)立つ立つ
海原(うなはら)は 鷗(かまめ)立つ立つ
うまし国そ 蜻蛉島(あきづしま) 大和の国は"

“大和には多くの山があるけれど とりわけ立派な天の香具山 その頂に登って大和の国を見渡せば 土地からはご飯を炊く煙がたくさん立っているよ 池には水鳥たちがたくさん飛び交っているよ ほんとうに美しい国だ この蜻蛉島大和の国は”
 (http://manyou.plabot.michikusa.jp/yamatoniha.html

も、有名な国見の歌です。


私の実家は丘の上にあり、入居した頃は、建っている家がまだ少なかったので、2階の窓から丘の下の平地まで広く見渡すことができました。

晴れた日に窓から遠くを見ながら、「倭は国のまほろば~」とか「大和には群山あれど~」などと、一人で両手を広げて、家族には聞こえないような音量で、叫んでいました。「国を祝福する」「住んでいるところに感謝する」思いを込めて……。 実に気持ちがよかったです。

皆さんも、旅行に行ったときなど、山の上や丘の上で、周りに人のいないことを確かめて、この御歌を、目に見える土地や住人への祝福と感謝の思いとともに、朗誦してみたらいかがでしょう。爽快な気分になれますよ!

今日も読んでいただき、有難うございました。

秋晴れの日差しが気持ちのいい日です。皆様にとって快適な一日でありますよう、お祈り申し上げます。

註:ご在世と御在位期間を、昨日(11月11日)間違えて記載したので、本日(11月12日)に訂正いたしました。不注意をお詫び申し上げます。どうぞご了承ください。
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