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天皇の御歌(33)―第45代・聖武天皇 [聖武天皇]

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今日も聖武天皇の御歌を
学びます。

御在世:701~756(崩御56歳)、
御在位:724~749(24歳~49歳)
です。





9月5日にはBSプレミアムで『大仏開眼』前編のドラマがありました。人間模様が興味深く、衣装が美しかったです。後編が12日にあるので楽しみです。


☆☆☆

“遠江守(とほつあふみのかみ)櫻井王(註・天武天皇の曾孫)天皇(すめらみこと)に「九月(ながつき)のその初雁(はつかり)の使(つかひ)にも思ふ心は聞こえ來ぬかも」と奉(たてまつ)る。天皇(すめらみこと)の賜へる報知(みこたへ)の御歌(みうた)一首

大(おほ)の浦の その長濱(ながはま)に 寄する波 
寛(ゆた)けく君を 思ふこの頃

天皇(すめらみこと)の御製歌(おほみうた)二首

秋の田の 穂田(ほだ)を 雁(かり)が音(ね) 闇(くら)けくに
 夜のほどろにも 鳴き渡るかも

今朝(けさ)の朝明(あさけ) 雁が音(かりがね)寒く 聞きしなべ
 野辺の浅茅(あさぢ)そ 色づきにける

(以上、萬葉集巻第八)

(p55)

(小田村寅二郎 小柳陽太郎編著『歴代天皇の御歌―初代から今上陛下まで二千首―』日本教文社 昭和52年8月15日 第5版)

☆☆☆

言葉の意味

1首目

遠江(とほつあふみ):琵琶湖(びわこ)を近江(ちかつあふみ:ちかつおうみ)に対して都から遠い浜名湖(はまなこ)のある国、遠江(とおとうみ)。今の静岡県の西部域。

守(かみ) :令制の官職。国司*(守、介、掾、目)の長官。

*国司:古代から中世の日本で、地方行政単位である国の行政官として中央から派遣された官吏


2首目、3首目

雁(かり):ガン。カモ目カモ科の水鳥のうち、ハクチョウ類を除いた大形の水鳥の総称。

初雁:秋になって最初に北方から渡ってきた雁

大の浦:静岡県磐田市の海岸にあった湖。天龍川、太田川の河道の変更と干拓により現存しない。

穂田(ほだ):秋になり、稲の穂が出そろった田。「秋の田の穂田を」は〈かり〉を導く序詞。

雁が音:ガンの鳴き声

闇(くら)けし:暗いのに

夜のほどろに:夜が明け始めるころ

朝明(あさけ):あさあけの音変化。夜明け

聞きしなべ:聞くにつれて、聞くとともに、聞くちょうどその時

浅茅(あさぢ):まばらに生えた、または丈の低いチガヤ。秋に葉先が紫に染まる。

1首目は、浜名湖(はまなこ)のある静岡県西部の遠江(とおとうみ)の国の国司の長官である櫻井王(さくらいのおおきみ)が、「九月に渡ってきた初雁を使わして私の気持ちを届けたいのですが」と詠んだ和歌に対して、聖武天皇が答えられた御製です。

静岡の大の浦の湖の長い浜に打ち寄せる波のように、ゆったりした頼もしいそなたを思っているこの頃である という程の意。

今だったら、琵琶湖のある近江と浜名湖のある遠江は一日で行き来できますが、昔は遠方の地だったのですね。遠い湖の国を治めている国司、近親者でもある櫻井王が天皇に思いを伝えたいという和歌に、私も思いを寄せていますよとこたえられた御製です。雁の群れに思いを託したり、湖の波のゆったりした様子を統治の有様に重ねたり、自然の鳥や湖にたとえて気持ちを伝える考え方が素敵だと思います。

2首目は、秋の田に穂がたわわに実り、刈穂も近くなったころ、雁の鳴き声が夜の明けきらぬ暗いうちから、響いているとの御歌です。雁も実りの秋に美味しいものを食べに行こうとして、早めに起きて餌をさがしに、ねぐらを出たのでしょう。

3首目、秋も深まり、冷え込むようになった明け方、雁の鳴き声を聞いていると、気温が低くなるのに合わせて、同じころに野原のチガヤの葉も紫に色づいていることだろうという御歌。「色づきにける」に、秋の紅葉の始まりの色を思わせられます。


ガンとカモの違いがよく分からなかったので、調べてみました。

以下のブログによれば、ガンは、カモより大きく、ハクチョウより小さいカモ科渡り鳥の総称。カモは主に夜間に活動するがガンは昼間に活動する。「ねぐら入り」と「ねぐら立ち」があり、V字飛行で雁が移動するのが見られるとのことです。また、カモの中にも、雁と呼ばれる種類があるそうです。なかなか複雑なようです。

(「ネイチャーエンジニア いきものブログ」「2020-01-11雁(ガン)の種類と魅力|ガンとカモは何が違う?雁行の由来になった鳥」
https://www.nature-engineer.com/entry/2020/01/11/090000#雁ガンと鴨カモの違い)


私は、雁の群れは記憶にありませんが、ムクドリの群れが朝夕、空を移動していくのは見たことがあります。また、一度限りでしたが、北海道の釧路でタンチョウヅルのV字飛行を目撃した感動は忘れません。飛行しながら、コーコーと鳴くのですね。雁も鳴きながら、飛んでいくのでしょう。一度、見て、聞いてみたいものです。


今日も読んでいただき有難うございました。

今日も皆様にとって良い一日でありますよう、お祈り申し上げます。

タグ:野鳥
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